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ダンスとアートの蜜月関係


VOGUE JAPAN

住吉智恵(Chie Sumiyoshi) アートプロデューサー、ライター。東京生まれ。「FIGARO JAPON」「Pen」「Byron」などでアートや舞台についてのコラムやインタビューを執筆の傍ら、アートオフィス&レーベル「TRAUMARIS」を主宰。各所で領域を超えた多彩な展示やパフォーマンスを企画。7/30(土)発電ポールダンサー、メガネと「自家発電ナイト2016」を開催(EARTH+ギャラリー)

有史以前、隠遁者であったシャーマンは、岩肌を掻いた洞窟画を前に、火を焚き、トランスの境地で踊ったのだろうか? ダンスとアートの蜜月関係は、太古の昔より現代まで連綿と受け継がれている。この夏、心をざわめかせる3組のコラボレーションを紹介したい。文明社会の奥底に潜む、原初的な人間の有り様に、自由に想像を遊ばせてほしい。

35年の時を経て甦った、ダンサーと写真家の「光合成」

写真家の記憶の層に埋もれていた、とんでもない作品が年月を経て甦った。パリと東京で活動する、「光」に魅入られた写真家・田原桂一。唯一無二のダンス表現の世界を築き、名優としても知られるダンサー・田中泯。1978年からの3年間、2人は世界各地を旅し、フォトセッションを繰り返した。未発表のまま眠っていたその貴重なフィルムが35年ぶりに発掘され、姿を現したのだ。 撮影地はローマのアッピア街道、NYの老朽したビルのテラス、アイスランドの荒野など多岐にわたる。全編を通して眼を惹きつけるのは鍛え上げられた肉体の塊としての迫力、皮膚の精細な触感、そこに躍るモノクロームの光と影だ。 なかでもフランスのボルドーの旧ドイツ海軍の潜水艦Uボートの基地跡で行われたセッションにはただならぬ鬼気が充満する。激烈な戦争の傷痕を呑み込んだ巨大な廃墟に立ち尽くす肉体と、コンクリートに刻まれた光と影が、屹立し対立する。時に胎児のように、時に死体のように存在する、その肉体の切実さにただ呆然とするほかない。 「その場の空気から近づいてくるシャッター音まで全部覚えてる、俺、やっぱりダンサーだ、と思いました」と、去る6月16日、2人のダンスと映像による舞台上でのセッションを終えた田中は語った。「人はどうやって踊りはじめたのか。身体で言葉をつくろうとしたのだろうか。踊りの秘密がそこにあるなら、自分の身体にしがみつき格闘するしかない」。世界の体温が高かった時代、前人未到の領域へ旅に出た若きアーティストたちの息づかいを感受したい写真集である。

写真集「Photosynthesis1978-1980 MIN by KEIICHI TAHARA」 発売中 価格/8,100円(税込) http://store.superlabo.com http://www.keiichi-tahara.com http://www.min-tanaka.com/wp


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