『ロミオとジュリエット』『ジゼル』
2月中よりWEB予約開始!
東京文化会館 6月公演
http://www.t-bunka.jp/calendar/index.html?y=2016&m=6&d=big
スティーヴン・マックレー インタビュー
スティーヴン・マックレー
まるでサーキットを駆け抜けるレーシングカーのよう。またたく間に世界のバレエシーンで頭角を現し、 英国ロイヤル・バレエ団を代表するスーパースターとなったスティーヴン・マックレーのことだ。 モータースポーツのような「アドレナリンのほとばしるものが好き」と公言するマックレーは、その言葉どおり息を呑むようなスピードと超絶技巧の持ち主。 しかし定評のある踊りはもちろん、近年は演技にも深まりを見せている。 今年6月に行われる英国ロイヤル・バレエ団来日公演で彼が踊るのは『ロミオとジュリエット』のロミオ役と『ジゼル』のアルブレヒト役。 どちらも高度な踊りのテクニックに加え、表現力の問われる役柄だ。
「いつもロミオを踊る時には原点に戻る気がしています」
――ロミオ役は今までに何度も踊られています。かつてマックレーさんがソリストだった頃、全幕作品の主役デビューを飾られたのもロミオ役でした。
マックレー:僕にとって特別な作品です。ダンサーとして一緒に成長して来た役です。いつもロミオを踊る時には原点に戻る気がしています。僕自身、とても若い時に妻(ロイヤル・バレエ団ソリストのエリザベス・ハロッド)に恋に落ちたので共感しやすい役柄でもあります。最初の頃は全幕を踊り終えるのに必死で、自分が何をしているのかよく分かっていませんでした。今は作品をよく知っているのでリラックスして舞台に上がることができ、演技をする余裕があります。舞台上で役を演じるのがいちばん重要なことですからね。
――浮き名を流していたロミオが恋に落ち、成長する演技は見所のひとつです。
マックレー:ロミオはジュリエットを初めて目にした時、「あの女の子と話さなくては」と胸の高鳴りを覚えます。そして第1幕の終わりに、彼の人生は永遠に変わることになるのです。しかしジュリエットと結ばれるには、ロミオは争いに向き合わなければならず、その結果、人を殺めることになってしまいます。彼はジュリエットなしでは生きていけないと知っているので自らの命を絶ちます。これは若い初恋の物語です。
――『ロミオとジュリエット』は恋の物語であると同時に争いがテーマの作品でもあります。男性ダンサーの迫真に満ちた戦いの場面は必見ですね。
マックレー:ギャリー・エイヴィスやベネット・ガートサイドなど、ロイヤル・バレエ団には世界でも最高峰のティボルト役が揃っていますからね。お互いふりでなく本気で戦っているので、きちんと防御できないと本当に剣で刺されてしまいます。あまりにも激しく戦うので、舞台上で思わず声が出てしまうこともあるんですよ。
Photos: Bill Cooper
スティーヴン・マックレー演じるアルブレヒト
「アルブレヒトはいやな男なのではなく、善良な人なのだと僕は思います」
――恋に突き進むロミオとは対照的に、『ジゼル』のアルブレヒトはジゼルを裏切り、それが悲劇を生みます。
マックレー:アルブレヒトはジゼルを心の底から愛しています。しかし彼は強いられた人生を生きなければならず、そこから抜け出せません。彼はジゼルを傷つけるなんて夢にも思っていなかったのです。だから自分のしたことが信じられない。アルブレヒトはいやな男なのではなく、善良な人なのだと僕は思います。しかし彼には彼自身の抱えている問題があるのです。アルブレヒト役を踊る機会が巡って来るたびに、技術的にも演技の面でも、さらに深みを増していくことができると思っています。なぜなら僕の人生にも変化があり、それによって演技も変わるからです。
――娘さんが産まれたのは人生の大きな変化ですね。まだ1歳を過ぎたばかりとか。
マックレー:娘は僕の人生のすべてを変えました。誰かのことをこんなに愛することがあるなんて、娘が産まれる前までは想像もつきませんでした。彼女を見ているとあまりにも愛しくて、文字どおり胸が痛くなることすらあるんですよ!
父親になり「前よりも色々なことについて疑問を持ったり、考えたりすることが増えた」と語るマックレー。現在の彼のダンサーとしての真価は、考え抜かれた表現が求められる全幕の物語バレエでこそ発揮されるのだろう。その彼が本拠地の英国ロイヤル・バレエ団と東京にやって来る。バレエファン必見の演技を見せてくれるに違いない。
(尾崎瑠衣 バレエジャーナリスト)
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