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Natacha Pisarenko / AP Photo
2月1日、アルゼンチンの首都の路上にバレエダンサーたちが繰り出し、交通を妨げながら、政府の予算削減に抗議して「白鳥の湖」のプレリュードを上演。居合わせた観衆から拍手喝采を浴びた。
国費で運営される国立バレエダンス団に所属していた約80人のダンサー、振付師、その他の職員たちは、政府の緊縮財政措置の下、昨年12月に職を失った。
これに抗議するダンサー達が、上演に先立ち、クラクションを鳴らす車列に向けて、路上でバーレッスン(バレエの基礎レッスンのひとつ)やストレッチなどのウォーミングアップを行った。ダウンタウンの通りには、バレエシューズを吊るした長いロープが張られた。
「文化、教育、健康は国家と社会の柱です」参加したダンサーの一人、マヌエラ・ブルーノ氏(28)は語った。
「そこは最初に削るべき部分ではありません。そもそも削ってはいけないと言っても良いかもしれません」。
2015年に就任したマウリシオ・マクリ大統領は、アルゼンチンの厳しい経済状況を抜本的に改善するため、政府支出の削減と外国からの投資の促進を公約に掲げた。
マネージメント・アンド・フィットのコンサルタントで、経済アナリストのマティアス・カルガティ氏は、「バレエの予算をカットしても、たいした予算の削減にはなりません」と述べた。「もちろん政府としては、常に優先順位を考えなければなりません。どこから先に予算を減らすべきか、と。バレエなのか? 年金なのか? 公務員給与か? 今の政府は、優先順位の低いものからカットしようとしているように見えます」
長きにわたり、国家が雇用と給与を保障することが当然とされてきたこの国で、このような政府の手法に対して国民は不安をつのらせている。マクリ政権は去る12月にも、年金改革法案に反対する過激な抗議行動を抑え込むのに悪戦苦闘した。これはまた、労働組合による24時間ゼネストの引き金にもなった。
また一方で、アルゼンチンでは高いインフレ率による購買力の減退が続き、多くの国民が高騰する燃料費や輸送コストに頭を悩ませている。マクリ大統領の人気は下がる一方だ。
ゴールドマン・サックスのエコノミスト、アルベルト・ラモス氏は、「財政再建はけっして容易ではなく、簡単には国民の支持を得られません」と述べた。
その一方でラモス氏は、仮に政府が支出削減を撤回すれば経済全体がさらに悪化すると警告し、「そうなれば、政府に対する国民の反対運動や抗議行動が今よりさらに深刻化するでしょう」との見方を示した。
今回の国のバレエ事業の廃止決定は、ダンス文化で世界に名を馳せるブエノスアイレスにおいて、多くの市民たちに大きな衝撃を与えた。
あちこちの通りやホールで踊られるタンゴは、世界的に知られたこの町の代名詞となっている。最高峰のバレエダンサーやオペラ歌手、オペラ楽団が、名高いテアトロ・コロンでこれまで上演を行ってきた。
「私たちはバレエ以外の文化全般についても、その未来について憂慮しています。また、クラッシックバレエを将来の職業として選ぶ可能性があったであろう子供たちのことも気がかりです」路上パフォーマンスの準備をしながら、バレエダンサーのマルガリータ・ペラルタ氏はそのように話した。
「今回の廃止決定は、現政権が、現在のことも未来への影響についても何も考えていないことを露骨に示していると思います」
By LUIS ANDRES HENAO, Buenos Aires (AP) Translated by Conyac